アチェ州の水害の現場でカメラを構える成田淳

Journal — Field Report

Aceh, Indonesia 泥に沈んだ日常と、掻き出す手

Field Report — 5.55°N 95.32°E · Aceh, Indonesia · 2026 · Emergency relief

インドネシア・スマトラ島の北端に位置するアチェ州は、赤道にほど近い、農業を主な生業とする土地だ。2004年のスマトラ島沖地震・津波で最も大きな被害を受けた場所としても知られる。その海辺の街を昨年11月、大規模なサイクロンが襲った。数万人が家を追われ、甚大な被害が出たという報せを受けて、発災から3ヶ月が経った現地へと向かった。

なぜ、これほどの被害になったのか。赤道直下では地球の自転による力が弱く、本来これほど強いサイクロンが直撃するのは稀とされる。その「想定外」の背景には、気候変動があると指摘されている。さらに追い打ちをかけたのが、人の手による土地の変化だった。その夏、隣のカリマンタン島で初めて目にしたアブラヤシのプランテーション──土壌の水分や養分を極端に吸い上げるこの木の栽培によって、本来なら雨水を蓄えるはずの豊かな土壌が、保水力を失い、硬く痩せてしまっていた。

川が決壊し、4〜5メートルの濁流が街や村を飲み込んだ。発災から3ヶ月が経っても、家の中には分厚い泥が残り続ける。個人の力ではどうしても掻き出せない泥を前に、途方に暮れる家族がいた。田畑も泥に沈み、多くの人が、その日を生きるので精一杯だった。

4年前、初めて海外取材で訪れたバングラデシュも、
ちょうど今と同じ、ラマダンの時期だった。

そんな中で今回は、現地の団体の皆さんと活動を共にした。炊き出しから始まり、物資の支援。そしてただ配るだけでなく、受益者の方々のこれからの生活の糧につながるような活動に、誇りを感じた。帰りの車中でアザーンを聞きながら、これまでの4年間に思いを馳せた。どれだけ長い時が経っても、あの時の祈りは聞かれているんだと感じた。

濁流に襲われた村の様子
濁流に襲われた村 — Aceh, Indonesia · 2026

世界では戦争が起きていたり、予期できない悲しいことが数多く起きている。それでも、この現場に遣わされているからこそ、できることがあると信じて。

Watch the Film — 本編を観る

LINEで相談する フォームで相談