取材の記録
- 場所
- 愛知県名古屋市、庄内川などの河口の藤前干潟
- 時期
- 2022年夏〜2024年春(取材と制作)、上映は2024年〜
- 一緒に
- 藤前干潟を守る会、Patagonia 名古屋店
- 作った物
- ドキュメンタリー「小さな生命、大きな未来。」(上映会で公開)
この記事の要点
- 藤前干潟は、名古屋市の庄内川などの河口に広がる干潟。かつては、ごみの埋め立て予定地だった。
- 市民が立ち上がり、1999年に名古屋市は計画を撤回。2002年11月18日、323ヘクタールがラムサール条約湿地に登録された。
- Patagonia の環境助成を受けて約1年半取材し、ドキュメンタリー「小さな生命、大きな未来。」を制作。2024年4月から上映会で公開している。
初出 2024.04.28(Instagram)/ 更新
名古屋市の西、庄内川などの河口に広がる藤前干潟は、かつて、ごみの埋め立て予定地だった。「自分の子どもたちや、その孫の未来の為に」と立ち上がった市民たちが、その計画を覆して守り抜いた。いま藤前干潟はラムサール条約に登録され、渡り鳥が羽を休める、生き物たちの楽園として保全されている。
藤前干潟とは?
名古屋市はかつて、急増するごみの処分場として、この干潟を埋め立てる計画を進めていた。それに対して市民が立ち上がり、大きな社会問題になった。1999年、名古屋市は計画を撤回。2002年11月18日、藤前干潟は323ヘクタールのラムサール条約湿地に登録された。計画の断念は、名古屋のごみ減量が進む大きなきっかけにもなった。
昭和30年代から始まった工業開発で、日本各地の干潟は恐ろしい規模と速さで埋め立てられていった。行き場を失った渡り鳥にとって、奇跡的に残された藤前干潟は、日本有数の渡来地になった。数千キロの旅路を経てやって来る渡り鳥。目には見えない底生生物が水を浄化し、海の栄養源になる干潟の世界。
「藤前干潟の映像を作って頂けませんか?」
2022年、そう声をかけていただいた。藤前干潟? 中学生の教科書で学んだ覚えはあるし、ラムサール条約だっけ。当時の僕の知識は、それぐらいだった。きっかけは、取材活動の為の服を買いに行ったPatagonia名古屋店。NHKで放送された僕の特集を、店の方がたまたまテレビで見てくださっていた。そんな奇跡から、ここに繋がった。
Patagoniaの環境助成を受けて、約1年半。この干潟と、守り続けてきた人々の物語を、ドキュメンタリー「小さな生命、大きな未来。」にまとめた。
釣り糸に絡まった、一匹のカニ
撮影の合間には、干潟の清掃活動にも参加した。Patagonia名古屋店や「藤前干潟を守る会」の皆さんと一緒に。気温36度の日の、1時間の集中清掃。何気なく捨てられたごみが、めぐりめぐってこの豊かな干潟へと流れ着いていた。釣り糸ががんじがらめに引っかかって、身動きの取れないカニもいた。この20年間で、どれだけの生き物が、自分のせいではない理由で命を奪われてきたのだろう。

時代に消費されず、
時が過ぎても色褪せない物を作る為に。
なぜ、一般公開ではなく上映会なのか
なぜ映像を一般公開せず、上映会という形を取ったのか。それは、届くべき人に届けたいと思ったからだ。絶え間なく情報が流れる現代の中で、たくさんの映像をかき分けて、かき分けて、見つけてもらう。
最初の上映は、2024年4月、藤前干潟活動センターで。1年半近く取材と制作を続けても、まったく時間が足りなかった。守る会の方々は喜んでくださったけれど、まだ良く出来る、まだ見やすく出来る。生きてきた中で初めて、悔しくて、悔しくて泣いた。

Patagonia名古屋では、お昼の部・夜の部とも満席の中で上映会を終えられた。足を運んでくださった皆さんのおかげだった。その後も、エシカルイベントや、藤前干潟の生きものまつりなどで上映を続けている。
環境問題の流れの中で、行動の本質とは何だろう。渡り鳥や、底生生物の、生命の神秘に、触れてほしい。