取材の記録

場所
フィリピン・セブ州(タリサイほか沿岸部)
時期
2025年11月上旬の1週間
何が
台風25号ティノ(国際名カルマエギ)による洪水と倒壊
役目
国際NGOの医療支援チームの記録担当(入職2日目に出発)

この記事の要点

  • 2025年11月4日、台風25号ティノ(国際名カルマエギ)がフィリピン・セブ島を直撃した。亡くなった方は232人、そのうち150人がセブ。被災した人は500万人を超えた(NDRRMC)。
  • 国際NGOに入って2日目、医療支援チームの記録担当として現地へ向かった。
  • 薬が不足する沿岸部の避難所を巡った。タリサイでは医薬品を支援した翌日、180人を超える人が健診を受けた。

フィリピン中部、ビサヤ地方に浮かぶセブ島。美しい海に囲まれた、観光の島。けれど、いくつもの台風が通り過ぎる道の上にもある。2025年11月4日、台風25号ティノ(国際名カルマエギ)がこの島を直撃した。記録的な雨で川があふれ、多くの家が倒壊した。

国の災害対策機関(NDRRMC)によると、亡くなった方は232人、そのうち150人がセブ。被災した人は、最終的に500万人を超えた。

台風の濁流に押し流された家々の跡
濁流が通り抜けた後の住宅地。セブ州、2025年11月。

入職して2日目、空港へ

国際NGOに入って2日目。事務所で作業をしていると、突然、声をかけていただいた。その日のうちにカメラを持って、空港へ向かった。不思議と、自分の故郷にこんな形で戻る事になるなんて、まったく思っていなかった。僕の中には、フィリピンの血が流れている。

倒木と瓦礫が残る川沿いの集落崩れた建物と瓦礫の広がる川沿い
川沿いの集落。

薬が足りない避難所で

僕たちは沿岸部の避難所を巡りながら、医療の現場の活動や、被災された方々の声を記録した。薬が不足している避難所も多く、医師や看護師たちが、限られた資源の中で懸命に支援を続けていた。

タリサイでは、看護師であり、バランガイ(地区)の代表でもある方と出会った。診療所で使う医薬品を支援した。翌日には健診会が開かれ、子どもから大人まで、180人を超える人が診察を受ける事が出来た。

夕暮れ時、人で賑わう街の通り
夕暮れの街。

一軒一軒、家を訪ねて

台風の影響が最も酷かったエリアでは、現場で出会った医師と一緒に、一軒一軒、家を訪ねた。子どもたちの診療の為だ。薬がとても不足していたので、前の日は車を走らせて、あらゆるドラッグストアを回って調達した。

この一週間、自分がこういう形で
“つくられた”意味を、感じています。

本来なら、ちゃんとお休みがある。けれど緊急の現場はイレギュラーで、身体も心も疲れがピークにきていた。それでも、ちっぽけな自分ひとりの力じゃない。チームの一員として動ける喜びのほうが、今は大きい気がした。異様に三半規管が強かったり、体力だけは謎にあったり。忘れ物を気にかけてくれる、優しい人たちに恵まれながら。

瓦礫が積み重なった被災地の風景

初めての緊急支援の現場で、至らない部分も、反省点もたくさんある。けれど、始めたばかりである事を理由にもせず、映像のプロとして現場に臨む事。学びながらも、一生懸命、頑張りたい。

成田淳

成田淳(Narita Jun)

映像作家・映像ジャーナリスト。1993年名古屋生まれ。国際NGOのスタッフとして災害・人道支援の現場に立ちながら、人と生き物と地球のドキュメンタリーを制作している。グリーンフィルムフェスティバル2024 最優秀賞。

出典:Inquirer「Tino causes 232 deaths」(NDRRMC発表)、世界銀行プレスリリース(2025年11月28日)

この記事は、2025年11月11日の Instagram の投稿(1・2)を、読み物として書き直した物です。