積丹半島は、北海道の日本海側に突き出した、切り立った岩場と青い海で知られる土地だ。かつてニシン漁で栄えたこの海に、いま静かな異変が起きている。海藻が消え、岩肌がむき出しになる「磯焼け」と呼ばれる現象だ。冬に引き続き北海道へ、トドによる漁業被害と磯焼けの取材のため、小樽と積丹半島に来ている。

地球温暖化と聞いても、都会で育った僕は、正直まったく意識していなかったし、遠い話だと思っていた。けれど、かなり近いところまで来ていることを、漁師さんの話や、自分で海に潜って磯焼けの現状を見て、肌身で感じた。藻場が失われれば、そこに集まっていた命の循環が崩れていく。海に生きる人たちの暮らしも、静かに脅かされていく。

情報ではなく、現場のリアルを知ること。
自分の目で見ることが、大切なんだと実感する。

日本に住む多くの人が、きっと僕と同じ感覚を持っている。だからこそ、その感覚を大切にしたい。環境問題の映像は、前提知識を飛ばして事実だけ伝えて終わるものが多い。問題が大きすぎて、作り手が責任を持てないのもわかる。それでも僕は、消費されない映像を、届くべき人に届く映像を作りたい。この取材はやがて、北海道の「いのちの電話」の映像制作へとつながっていった。何ひとつ、意味のない時間はなかった。